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深酒した人妻が帰宅後に体の疼きを抑えられず夫だと思って仕掛けた人違いの夜の営み

この記事の所要時間: 348

頼子の中で全てがハッキリした。

ここは、結婚前に自分が借りていたアパートである。

結婚した年に、ちょうど大学に入った弟の昌明が引き継いで、このアパートを使うことになった。

前後不覚になるまで酔ってしまった頼子は、無意識の内にかつて自分が暮らしていたアパートに戻ってしまったのである。

余分に作っておいた合い鍵は、どうせ弟が使うんだから返さなくてもいいとキーホルダーに付けたままだった。

 

「まさかねえ。」

昌明が、頼子の背中を撫でながら呟いた。

「頼ちゃんとしちゃうなんて。」

「言わないで。勘違いしてたんだから。」

「俺と清さん、間違えたの。全然体型が違うじゃない。」

「うん、変だなとは思ったけど。」

「いつ違うって分かったの。」

「ここ握った時。」

頼子の手が昌明の前を握りしめた。

 

「清さんじゃないって分かっても、しちゃったんだ。」

「だって、あそこまで行ってて、やめられる。」

「うーん、それも分かるけど。」

握りしめた頼子の手が動き始めた。

 

「だ、駄目だよ。」

「何で。」

「またしたくなっちゃう。」

「私もなの。困ったわねえ。」

口では困ったと言いながら、それでも頼子は手を離さず、握りしめた手を微妙に動かし続けた。

酔いが醒めてみると、ここが以前自分が住んでいたアパートだと気付いた時点で相手が弟だと分かっていた筈である。

頼子は自分自身に疑いの目を向けた。

果たして本当に見ず知らずの男に身を任せただろうか。

心のどこかで相手が弟の昌明だと分かっていたからではないのか。

 

「ねえ、もう一度したら、後戻り出来ないよ。」

昌明が戸惑ったような言い方をした。

「何で。」

「今は相手が頼ちゃんだって分かってるから。」

「分かってても、出来る。」

「昨日までなら出来なかったな。」

「私だって。」

「やめようか。」

「そうねえ。」

背中に回っていた昌明の手がいつの間にか頼子の尻を撫でていた。

少しずつ入ってくる指先が頼子にはもどかしい。

頼子も握りしめたものを強くしごき始めた。

 

「清さんは。」

「出張で留守なの。」

「そう。」

お互いに離れる切欠を探していた。

「でも、帰った方がいいんじゃない。」

「多分。」

言葉とは裏腹に、昌明の指が後から襞の中に入り込んで来た。

思わず、頼子の手にも力が籠もる。

頼子が片膝を持ち上げて、昌明の上からのし掛かって行った。

握りしめたものが、襞の中で昌明の指に出会った。

 

「困ったわねえ。」

頼子がもう一度同じことを言った。

昌明はそれに答えず、指先で頼子の襞を分けた。

待っていたように頼子が握りしめたものを宛った。

それきり、二人とも口を開こうとはしなかった。

 

これっきり、今日だけのことにしなきゃ。そう思えば思う程離れがたい気持ちが募ってくる。

頼子の脳裏に幼い頃の日々が浮かんでは消えて行った。

五つ歳の離れた弟と遊んだ記憶は殆ど無い。

昌明が中学生になって男っぽい臭いをさせるようになってからは疎ましく思ったことさえあった。

肌と肌が触れ合うなんて思っても見なかった。

そんな弟が今、自分の中で動き回っている。

 

夜が明けても二人が離れることは無かった。

表が少しずつ賑やかになって来る。

そろそろ起きて家に戻らねば、頭ではそう思うのだが、自然に身体が弟を求めてしまう。

若い昌明も同じような情熱で応じてくる。

これで最後が三度続き、ようやく昌明が身体を起こした。頼子も仕方ないと言った表情で頷いた。

 

「これ、置いてくわね。」

風呂から出て身繕いを済ませた頼子が、キーホルダーから合い鍵を抜き取ってテーブルの上に置いた。

「持ってれば。」

昌明の言葉に、頼子が身体を固くした。

「でも、」

「持ってなよ。」

暫く迷った頼子がコクッと頷いた。

「そうね、持っててもいいよね。」

昌明のアパートを後にした頼子の手に、その合い鍵がしっかりと握られていた。

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