【レズ小説】消えた女生徒と囚われの女刑事
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『学校の中やったら女の子1人を監禁する場所くらいはいくらでもありそうやわ』
桃華は学院の外で梨緒の帰りを待っていた。部外者の桃華が勝手に入り込む訳にもいかず考えあぐねていた。
「もし」
「え?」
フイに声を掛けられた桃華が振り向く前に、彼女の乳房に固いモノが押し当てられた。
「なっ!?」
「しーっ、大声を上げると…判るわね」
薄い紫のスーツを着たOL風の若い女が、桃華の肩を抱きかかえて囁いた。
「来るのよ」
女は桃華を連れ、学院の近くにある図書館の駐車場に歩かせた。
『この女…やっぱり利緒ちゃんも!』
桃華は誰かが危機に気づいてくれないかと一縷の望みを掛けた。だが桃華の願いも空しく、誰ともすれ違う事すらなく歩かされた。
「乗って」
ワゴン車の中に連れ込まれた桃華は、カーテンを引かれた薄暗い車内で両手を後ろで組まされた。
『縛る気なんやわ…ああ誰か…』
桃華の願いも空しく、瞬く間に縛り上げられた上、身体にも縄が巻きつけられた。
「口を開けるのよ」
目の前に突きつけられたのは、丸められたピンクのハンカチだ。
「…」
躊躇している桃華の脇腹に、チクリと痛みが走る。観念した桃華は小さく口を開けた。
その瞬間、桃華の口にハンカチが広がった。咽はしないが口で呼吸するのが困難になったその口に、ガムテープがベッタリと貼り付けられた。これでハンカチを舌で押し出せない。
「グムム…ムウグッ!」
ガムテープの匂いを嗅がされていた桃華の顔に、手拭いのような布が巻きつけられた。鼻まで覆われた布は、桃華の後頭部でがっちりと結ばれた。
「フグッムググッウンググッ」
頭を振ってイヤイヤをするが布は外れず、その間に桃華の両足も縛られた。
「大人しくしてるのね、女刑事の桃華さん」
『どっ、どうしてウチの名前を…!?』
桃華を見下ろす女は、ニヤリと笑うと桃華の身体を覆い隠すように毛布を掛けた。
「もう1人?どういうこと亜子?」
洋子の前に居るのは、2時間前に桃華を襲った女だ。亜子と呼ばれた女は洋子の前に桃華の名刺を出して見せた。
「県警の女刑事・御蔵桃華…?」
「その女があたし達の事を嗅ぎ回ってるそうよ。こっちに来てみたら学院の側でウロウロしてたからね」
「そう…」
「あなたの方は?」
洋子はニヤリと笑って後ろの校舎を指差した。
「捕まえてあるわ。今は使っていない宿直室の炬燵の中にね」
「大丈夫?見つかったり逃げられでもしたらコトよ」
「雁字搦めに縛ったから平気よ。それより今夜例のアジトに連れてくわ」
「OK」
誰も居ない校舎裏、洋子と亜子は悪巧みを済ませて立ち去った。
その日の夜に出発し、時刻は既に午前4時近かった。
洋子と亜子の運転する車は山間の雪道を走り続け、1軒の立派な山荘に到着した。
車を停めた亜子は鋼鉄製の板状の門を開け、洋子が中へ車を進める。
門を戻した亜子が何重にも鎖を掛けた玄関のドアを開けた。中から操作され、玄関横の車庫のシャッターが開き、車はその中へ滑るようにすっぽりと入っていった。
シャッターが閉じられ、車のトランクが開けられると、亜子達は荷物を降ろした。2人がトランクの底のシートをベリベリ剥がすと、指を入れる穴が現れた。
「さあ到着よ」
中には毛布で包まれた梨緒と桃華が閉じ込められていた。身体中を縛られた2人はトランクから降ろされ、車庫から山荘内部へ続く扉を通された。
「座るのよ」
梨緒達はソファに座らされると、ソファから立ち上がれないように縄で固く縛り付けられた。
「これでよし」
「ウウウッウウウグッ」
「ん?なあに?」
口を突き出して呻き声を上げる桃華に気付き、亜子が猿轡の手拭いとテープを剥がす。
「ぷわっ…あんた達が東雲女学院の生徒さん達を誘拐したんどすな?」
「ええそうよ」
もはや隠しも誤魔化しもせず、洋子はサラリと言ってのけた。
「…目的は身代金どすか?」
「いいえ」
「それじゃあ…」
「まあ刑事さんだから自分の身の安全より民間人の事を心配して当然なんでしょう。だけど若い女がそれじゃあねえ」
「…ウチらをどうする気どす?」
「ふふん」
洋子は暖炉に薪をくべながら窓の外を見た。
「こういう事になるとは正直思ってなかったわ。まあ好奇心旺盛な小娘がしゃしゃり出てくるとは予想してたけど、まさかあそこまで調べに動くとはねえ」
洋子がそう言いつつ梨緒を見る。梨緒はキッと睨み返し、洋子達に屈しないという意思表示をしてみせた。
「まあとりあえずあんた達はここで冬を越して貰おうかしらね」
「なっ!?」
「それだけの時間があれば拉致した小娘達を運び出せるもの。亜子」
洋子の合図で亜子がガムテープの輪を取り出した。
「悪いけどここで計画を邪魔されたくないの。いい子でいなさい」
「やめ…ウウウッ!」
桃華の言葉がガムテープで遮られ、桃華は再び喋る自由を奪われた。
「ウウッムムーッ!」
桃華に猿轡を再び嵌めた亜子は、梨緒の首筋に注射器の針を差した。
「ウウッ」
「安心おし。只の麻酔薬で毒じゃないわよ」
「お手洗いに行かなくても済む魔法のね」
洋子達は暖炉に新たな薪をくべ、防寒着を着て車の鍵を手にした。
「いい子でね」
2人は利緒達をそのままに、再び山荘の外へと車を出した。
凄い二人組だこと!(*^o^*)