【レズ小説】消えた女生徒と囚われの女刑事
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「…」
頭がズキズキ痛む。
ジーッと耳鳴りがする中、梨緒はゆっくりと意識を取り戻した。
『…う…こ…こは…』
ぼんやりとする梨緒の視界に入ったのは、火の点いたストーブだった。
柔らかいカーペットの上に寝かされている。
だが次の瞬間、梨緒は自分の身体が動かせない状態にさせられている事に気付いた。
『う、嘘!?あたし縛り上げられてる!?』
両手を背中に回され、身体も腕が痛い程硬く縄が巻かれているのだ。
何か言おうとしたが、唇に何かが貼り付き、更に鼻まで布で覆われている。
「ムッウググッ」
「ようやくお目覚め?」
「!?」
梨緒の死角から聞いた声がした。
「いけないわねえ、未成年がこんな時間にフラフラと…」
『間違いないわ!山野先生!』
「何をしに深夜の学園に忍び込んだのかは…まあ聞かないわ。だって聞いても今のあなたは喋れないんだものね」
クスクス笑う山野洋子は、鼻まで覆った布をずらした。
「ムグ!?ウウウウ~ッ!」
洋子はガムテープで塞いだ利緒の口元に、ハンカチらしき布を押し当てた。
ツンとする甘い刺激臭を嗅がされた梨緒の意識は、呼吸のたびに遠くなり、遂に梨緒は深い眠りの底へ沈んでいった。
「…バカな娘ね」
洋子はずらした布を戻し、再び梨緒の口を鼻まで覆ってギュッと縛った。
すっかり夜が明けた時刻、梨緒はまだ暗い闇の中にいた。少しだけ闇に目が慣れたがまだはっきりしない。見えるのは赤っぽい花柄の布だ。
左右を見回しても同じと言う事は、どうやら布で覆った四角い空間の中に閉じ込められているようだ。
『…ここって…ひょっとして…炬燵の中…なの…?』
梨緒はうつ伏せにされたまま転がされていた。手首をぐいぐい動かすが、まったくほどけそうになかった。
『どうしよう…桃華さんに知らせたいのに…』
梨緒は留守番メッセージを桃華が聞いてくれている事を祈った。
伝言には学園に行く事も深夜に洋子の車が駐車していく事も映像込みで伝えてあるが、もしその前に洋子が梨緒の家に行き、PCのデータを全て破棄してしまったらもう証拠はない。
忍び込む時に持っていたノートPCは取り上げられている。それ以前に後ろ手に縛り上げられている今の梨緒にどうすることも出来ない。
「ウ~ッ!ウウウ~ッ!」
無駄だと判っていても声を出して助けを呼んでみる。
しかし意味のない呻き声にしかならないし、その呻き声も分厚い炬燵布団が外に漏らさないだろう。しかしそれでも梨緒は暴れ、呻き声を上げ続けた。
ーバサッー炬燵布団が捲られ、洋子が顔を見せた。
「おはよう、良く眠れたかしら?」
「ウウウ…」
「悪いけどもう暫くそうしてて頂戴ね。呻いても無駄だしキツク縛ったからほどけやしないわ。電源を入れたままで暖め続けといてあげるからいい子でいなさいね」
洋子はそう言って小さな缶を炬燵の中に置いた。小さなデジタル時計が付けられている。
「それは麻酔ガスよ。タイマーで流れるようにしておいたわ」
洋子は手を突っ込んで縄と猿轡が緩んでいないか確認すると、再び炬燵布団を戻してしまった。
ーピッピッピッータイマーが逆算して行くのを、利緒は電源を入れられて明るくなった炬燵の中で見ているしか出来なかった。
「…おかしいわ」
港から戻った桃華は、梨緒が家に居ない事に違和感を感じた。
『変やわ、お部屋の暖かさからして昨夜からみたいやけど…そうやわ!』
桃華は携帯電話を開いた。案の定留守番サービスに伝言があった。
「…大変やわ!」
桃華は冷静でいられなくなり、梨緒の身を案じて駆け出した。
「…」
空腹に耐えつつ、炬燵の中に監禁された梨緒はじっとしていた。
タイマーが0になり、穴から吹き出た白い煙を吸い込んでしまった梨緒は、ついさっき目を覚まして落胆した。
『逃れる術がないわ…誰か!誰か助けて!桃華さん!』
ウーウーと呻き声を上げてはもがくが、縄は一向にほどける様子もなく、梨緒はお尻と背中を赤外線で暖められ続けている有り様だった。
「いい子にしてる?」
バサッと炬燵布団が捲られ、洋子が小声で梨緒に話し掛けた。
「ウウウウ…」
「ふふふ、うらやましいわ。今日は凄く寒いんだから」
洋子はそう言って理緒の縄が緩んでいないか確認した。
「放課後になったらドライブよ。ふふふ…」
『何処かに拉致する気なんだわ!』
洋子の言葉の裏を悟った梨緒は、炬燵の中でモゾモゾと暴れた。
「観念おし。誰も助けに来やしないわよ」
洋子は炬燵布団を戻すと、誰も見ていない事を確認して授業に戻った。
凄い二人組だこと!(*^o^*)