俺達の秘密基地で勝手にエロ本を見ていた同級生の女の子を全裸にしてH心を満足させていたガキの頃
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記憶が定かじゃない。でもそんな自分に自信が持てない。
千尋を助けにいかなきゃいけないっていう、TVヒーローに埋め込まれた陳腐な正義心じゃ、本能的に逃げる心を抑えられない。
そこまで失態を自ら演じてしまって、今更助けになんかいけやしない。いいや、それすらだって言い訳だ。
・・・ああ、そうなんだ。オレは怖くて、オレよりも弱い千尋を助けに行く気さえも起きないんだ・・・そう思ったら、自分が情けなくてわんわん泣いた。
「・・・―――っ!!!!」急にオレを呼ぶ声がした。
ゲンゴか?って思って心が震えた。そんなオレを真正面に見据えて、タカちゃんとシンちゃんがいきなり泣きながら謝ってきた。
「ごめんっ!」
「ごめんっ!」
「オレ達、逃げちゃったけど、これじゃあいけないって戻ってきたんだ!!」
「千尋を助けに行こう!!」
泣けた。凄く。さっき裏切り者って思った自分が凄い恥ずかしかった。
こいつらの方がえらいよ。だって千尋を助けに行こうっていうんだ・・・この時、始めて幼馴染じゃなくて、こいつらは親友だって思った。
そう思ったら勇気が出てきて・・・ぐしっ・・ともらったタオルで涙を拭いて、タカちゃんが洗濯するために持ってた短パンを借りてフルチンを隠した。
そのまま大急ぎで基地まで戻った。当たり前だけど誰もいない。
そのまま断片的な記憶を頼りに、荒れた下町までの道を追っていく。・・・いない。
また戻る。・・・いない。また辿る。・・・いない。さっきまでの騒ぎが嘘のように、ゲンゴも千尋もいなかった。
基地に戻って自分たちの名前の入った物をすべて回収した。
証拠を残さないためだ。でも千尋の下着はなかった。
あったのは、千尋の持ってきてくれたケーキやお菓子を入れてくる、名前入りの食器入れだけだった・・・。
もう夏休みに入っていたから、次の日学校で確認するってことは出来なかった。勇気をしてした電話はすべて留守電になっていた。
3人で食器袋を届けにいっても、家には誰もいなかった。基地で千尋を待っていても、どんどんオレ達の心は重くなる。
しだいにその空気に耐え切れなくなり、5日目には千尋を・・・その思いを振り切るかのように、オレはタカちゃんとシンちゃん同様に自転車を強引に手に入れ、補助輪無しで乗るように特訓した。
この前できた擦り傷が癒える頃には、自転車で転んだ傷が出来、それがかさぶたになる頃にはオレ達の活動範囲は格段に広がった。
もう基地造りなんていうガキの遊びなんかしなくてもどこにだって行ける。
こうしてオレ達の低学年最後の夏休みは終わった。
明日はいよいよ新学期・・・全校朝礼で千尋の事がわかる。
全校朝礼は、雨が降っていたため体育館で行われた。
タカちゃんとシンちゃんとオレは、おなじクラスで並び順も近かったから、口真似とボディランゲージである程度なら静かに会話できる。
千尋は、オレたちのやや斜め前に立っていて、じっと先生の話を聞いている。所々に絆創膏を張り、左手二の腕に軽く包帯を巻いていた。
朝礼も終わりになり、最後に校長先生から全校生徒への注意が発表された。
「あー、最近、学校の側に怪しい男がうろついているとの情報がありました。出来るだけ一人で行動せず、暗くならないうちにお家に戻るように」
ざわああっ・・・・ざわ・・・ざわ・・・・ひそひそ話がそこらでされる。
基本的にゲンゴの事だって皆わかってた。
問題は今まで生徒や親の間で問題になったことはあっても、学校がそこに絡んでくることはなかったからだ。
つまりこれは、よっぽどの事が起きたんだってことになる。
オレ達は素早く会話を交わした。
(お前言ったのか?)
(いうわけないじゃん!)
(じゃあ・・・千尋が・・・)
見ると千尋がうつむいている。髪の毛が邪魔で表情がわからない。
・・・確かに当時の俺達はガキだ。セックスなんかしりゃしない。
でも、オレ達にも直感でとあるイメージに結びついてしまった。
・・・千尋はきっと、エロ本みたいな事をゲンゴにされたんだ。
だから学校が・・・。それをされた子がどれだけ可愛そうで屈辱かは子供ゆえに特に肌身にしみる。
その時、千尋がふと何かに気付いてはらっと髪の毛を落とした。
そのままこっちを見ようとする・・・朝礼がおわったのを言い訳に、俺達は教室までダッシュした。今更どの面さげて千尋に会える?
低学年が終わり、中学年が終わった。
俺達は未だに千尋とは顔も会わせていない。
随分経つけど、この学校に居る限り常に根底に彼女を気にしてる自分がいる・・・。
・・・思えばあれから色んな事があった。
自転車で行動範囲を増やし、隣学区の奴らとの抗争、スイミングスクールでの競い合い、塾で出来た他の学校との友達との交流・・・それぞれ面白いこと・Hな事はあったけど、それはまた別のお話。
タカちゃんとシンちゃんは相変わらず一緒で、おなじ悪さ・遊びをする悪友と化している。
でも、あいつの話だけは一切しなかった。皆それぞれ、心中に辛い思い出として残っていたからだ。
高学年になって、始めての秋。
晴れた空の下で、俺達の学校では運動会が開かれていた。
俺は中距離走で一番を取り、タカちゃんやシンちゃんとハイタッチして一番旗を放送受付に持っていく。
旗と交換で、ノートやシャーペンがもらえるんだ。
その旗を渡し、少し待つように言われたから、校舎によりかかるようにその場でしゃがんで一息ついた。
「ふうぅっ・・」
「お疲れ様、これ、景品ですよ?」
「あ、ありがとー」
ぶっきらぼうに顔も見ず受け取ってそのままうなだれる。
オレは典型的な思春期時「女なんて」派・・・硬派気取だった。あんな事もあったからね。
とすっ・・・ふと横に誰かの存在を感じた。甘い匂い。
さっきの受付の子が校舎にもたれかかってるらしい。
「・・・何だ?」
ふと見上げると、校庭の競技を見てる女の子の顔。
「・・・い?!」
思わずまじまじと見直した。匂いも昔とぜんぜん違うから解らなかった。そこに立ってたのは千尋だった。
約二年ぶりの再会。でもこの体制じゃ逃げることもできゃしない。
第一この状況で逃げたくも無い。
あれからオレは、少し意地を張ることも覚えたんだ。
ただ黙って足をぷらつかせる千尋。
何か言って欲しそうな、責めてるような・・・。ただ黙ってるのも何だから、オレは思い切って聞いてみる事にした。
でも、今まで逃げ回っていたんだから簡単に長い言葉なんか出やしない。
振り絞るようにいった一言。それは・・・「大丈夫だったのかよ?」これだけだった。
一瞬、背筋を伸ばした千尋は、ゆっくりとオレの方を見下ろす。
じっと目を見つめ返す千尋。照れくさくなってオレはそっぽを向いた。
「・・・気にして・・・たんだ・・・」ぼそっと言う千尋。
「そりゃあ・・・」お互いに言葉を無くす俺達。
すると、ずるううっ・・と千尋はしゃがんで、体育座りで俺の横に腰を下ろした。
・・・なんなんだろう、この空気は。運動会の喧騒なんか全然聞こえなかった。
ばくばくと心臓がなるのを抑えるだけ。でも様子がおかしかねえか?
当時は一言で言い表せなかったこの空気。今、この2ちゃんねるだから言える。すなわち、「まったり」。
こてんっ、と体育すわりした両腕に首をかしげるように頭を乗せ、口元を隠してじっと俺を見てる。腕に隠れた口元。なんだか笑っているようだ。
「心配・・・してくれたんだ?」
「・・・あ、当たり前だろ?」
「・・・大丈夫だったよ?私・・・」ばっと慌てて千尋の方を見る。
「大丈夫」小さい声でもう一言。もうお互い大人の授業は済ませてる。
その事だって解ったら顔が急に熱くなってきた。
手をさすりながら千尋はこういっていた。
オレが千尋と手を離した所は、林の中のくぼみの中だった。
手を変についてしまったけど、ゲンゴはそのままオレを追いかけていったらしい。
「傷、残っちゃったけど・・・」
照れくさそうに笑う千尋。その後、じっとオレを見上げて次の言葉を待ってる。
・・・ちょっと待ってくれ、俺はそんなにいい奴じゃない。
お前をいたずらして、保身にためにどんな酷いことをしてきたか。
ゲンゴの時だって・・・今なら嘘をついたりも出来るかもしれない。
逆に謝って誤解を解いているかもしれない。
でもそんな知識や経験なんかまだ無い。
だから出来る事は言葉も無く彼女を見ることだけだった。
「千尋ーーっ!!」
「はぁーいっ!」
すくっと千尋が立ち上がる。そのまま正面の子に今行くって手を振った後、後ろも見ずにこう言う。
「また・・・呼び出す?」
「・・・ばか」思わず突っ込み返すオレ。
そのオレに振り返りながら「ふふっ」って笑って、とんとんとんっと戻っていく千尋。
・・・オレは心から安心した。この学校で始めて味わった開放感・・・オレは千尋に救われたんだ・・・。
塾も始まって、クラブ活動もある。意外と高学年は忙しい。早い奴は人生を決めかけちゃう奴だっている。
そんな忙しさにかまけて、また硬派気取りだったことも災いして、千尋と軽くあいさつする以外は話しする機会に恵まれなかった。
2月14日には下駄箱に小さなチョコレートケーキが入ってた。
基地で食べた奴の立派なやつ。タカちゃんとシンちゃんに隠れてもって帰るのが大変だった。
それ以降、あまり彼女を見る事がなくなった。
おかしいと思って調べたのは学生服の詰襟きて出た卒業式の日。最終学年時には転校していったらしい。
タカちゃんとシンちゃんとで卒業式の後、彼女の家に行ってみた。
それはあの基地のすぐ下の町・・・。
すぐに家に逃げこんだんじゃんか、って言ってゲラゲラ笑いあった。
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