酔った勢いで恋心を寄せていた先輩女子校生とSEXそして…
この記事の所要時間: 約 43分32秒
そんな屁たれで、泣き虫で根性なしな俺も来月結婚します。
一つ年上の、色白で華奢でハスキーな声の持ち主のイギリス帰りの素敵な女性と。
由香さん改め、塔子さんと結婚します。
長々とお付き合いありがとうございました。
じゃ(by 裕美改め久恵さん)。
ヒロ君、お元気ですか?
手紙はシンプルな便箋に、塔子さんらしい綺麗な字でこう始まりました。
(ほぼ原文のまま書きます)
久恵から聞いてもう知っていると思いますけど、私は今、イギリスのリバプールという街にいます。
ヒロ君はリバプールという街を知っていますか?
リバプール?どこだそれ?ビートルズにもサッカーにもまるっきり興味がなく、イギリスというとロンドンしか思い浮かばない、俺の無知っぷりを知ってか知らずかリバプールの街についての説明が数行あったけど省略。
あの後、自分の口から留学することをヒロ君に伝えようかとずいぶん悩んだけど、結局言えませんでした。
ヒロ君にその話しをしている最中に、きっと泣いてしまうだろうなと思っていたし、せっかくの決心が鈍ると思い出来ませんでした。
それに伝えたところで、もうどうすることも出来ないって思っていたから・・・。
あの後のことを、久恵からの手紙で知りました。
ヒロ君の気持ちを考えずに、自分本位な行動をしてしまったこと、また逃げるように日本を発った自分の行動が恥ずかしいと思い、今とても後悔しています。
でも誤解のないように言っておきたいんですけど、ヒロ君とああいったことになり、自分の思いを遂げることができたから、イギリスへと発つ決心をしたわけわけではありません。
あの日から1週間後に日本を発つことはもう、前から決まっていたんです。
でもこれって自分勝手な考えで、結局は言い訳ですよね。
それにヒロ君が私に好意を寄せてくれる可能性があるなんて、考えてもいなかったから。
だって、ヒロ君の前の彼女と私、ぜんぜんタイプが違うでしょ?
あの日、本当に偶然ヒロ君が一人でいる姿を見つけ、もう自分の中ではとっくに整理がついていたと思っていた気持ちは、結局は自分の気持ちをごまかしているんだなって気づきました。
もう1週間後には日本を発ち、ヒロ君にはもう二度と会えない。でも今日こうして出会えたのは、なにかの運命なのかなって自分にいいように考え、久恵にお願いして声をかけてもらいました。
久恵は最後までずいぶんと反対してたけど。
実はあの日、日本での最後の週末ってことで、久恵とは以前から朝まで語ろうと計画をしていました。
でも、偶然ヒロ君の姿を見かけその計画を変更して、私の家へと誘いました。
こっからあの日に俺の行動(泥酔っぷり)について書かれてました。
家に電話するのに間違い電話を4、5回もしていたこと、しかもそのうち2回は同じ家に電話していたこと、更に、やっと繋がったと思った電話も、妹がいたずら電話かと思い1度切られてしまったことなど。
もちろんエビの話しも書いてありましたよ・・・(照れ)。
(全文を書くのもちょっとどうかと思いますので途中省略します。)
父の仕事の都合もあり、いつ日本に帰国できるのかはまだ分かりません。
日本に帰った時、あの日のように偶然ヒロ君の姿を見つけることができると信じています。
きっと見つけることができるよね?だってあの日、見つけることができたんだから。
少し大人になり、素敵な男性に成長したヒロ君の姿をきっと見つけることができると信じています。
ヒロ君も、もし偶然にも私の姿を見かけることがあったら、その時は声をかけてください。
塔子
P.S ずいぶんと心配していましたが、私は現在一人です。 安心しましたか?
それともヒロ君は酔っていたので、よく覚えていないかしら。
ざっくりですが、こんな感じで塔子さんが日本を離れ、1ヶ月ちょっとしてからエアメールがきました。
最初この追伸の文の意味がよく分からなかった。
後に本人に聞いたところ、「赤ちゃんは出来ていませんでした」と言いたかったらしいです。
自分の部屋にこの手紙が置いてあったのを見たとき、心臓の鼓動が超早くなったよ。
もうすっごい勢いでドッキンドッキいってるの。その鼓動で胸が痛くなるぐらい。
塔子さんからだ!!
すぐに分かった。手紙なんてくれる人は塔子さんしかいないって思ってたし。
それにエアメールでしょ?海外に知り合いなんているわけもなく、もうこれは塔子さんでしょって確信した。
俺の住所は、裕美・・・じゃなくって久恵さんが調べて知らせたらしいです。
久恵さんも、俺の号泣っぷり(後に「ありゃ~ギネス級だったねぇ~」と言ってました(照れ))を見てほんの少し(!と言っていた)可哀想と思ったことと、やっぱり塔子さんの行動に少なからず疑問を
抱いていたみたいなので、俺に連絡をするようにと勧めていたみたいです。
手紙を読み進めていくうちに当時の感触が蘇ってきて、どんどん涙が出てきた。
ホント涙で、字がにじんで見えなくて、まともに手紙が読めないぐらい涙が出た。
手紙をくれたことについては、ちょっと複雑な心境だった。
手紙が来たことについては、正直うれしかった。手紙そのものは確かにうれしかった。
でも、この手紙、来るのが早すぎた。もっと時間が経ってからきて欲しかった。
だって俺まだまだ全然立ち直ってないんだもん。
まぁ~ほんの僅かだけど心の傷は癒えてたと思うよ?そう屋上での出来事の時と比べるとね。
でも、まだぜんぜんダメ。ぜんぜんっていうか全くダメって感じ。
そんな、まだまだ落ち込んでいる最中にこの手紙でしょ。立ち直るために更に時間が必要だよって思った。
もう、相変わらず久恵は余計なこと言うなよな~って当時は思った。
どうにも出来ないもどかしさ、自分の力のなさ(旅費を捻出する経済力とかね)に憤りを感じた。
金がないなら密航でもなんでもしろって、思うかも知れないけど、俺、当時高校生じゃん?しかも屁たれ。
密航でもなんでもして、いざイギリスに行ったとしても、
どうやって塔子さんに会いにいけばいいのか、分からなかったよ。
言葉も通じない、地理もまったく分からない。分かってるのはイギリスって国の場所ぐらい。
(俺この時、社会の地理、5段階評価で2、英語は4だったけどそれじゃ無理でしょ!?)。
こりゃ迷子になって身元不明死体になること必至っしょ!?って思った。
会いたいって思う気持ちよりも、不安な気持ちの方が大きかったってのが、当時の俺の正直な意見。
それに会ってどうなるの?とも思った。せっかく会ってもずっと一緒にはいられないんだしって思った。
更に、手紙の最後の数行が俺の熱意とわずかにあった勇気を一瞬でそぎ落とし、失意のどん底へ落とし込めたね。
普通、こういった場合、待っててくださいねとか、あなたに会いに日本へ帰りますとかって書かない?
そういったことが一切書かれてないんだもん。
いつ帰国するか分からないって、それっていくら待ってても無駄ですよって遠まわしな言い方でしょ?
あっこりゃもう終わったなって思った(ってゆ~か始まってもいないけど)。
でも、そうは思ったもののやっぱなんか諦めきれない。それに自分自身納得ができなかった。
俺はダメ元覚悟で返事を書いた。ミミズがのた打ち回ってるようなへたっぴな字で。
女性に手紙を書くなんて、小学生の時の交換日記以来のことだよと思いつつ書いた。
何度も何度も書いては消し、消しては書いての繰り返しだった。
2日ぐらいかかったかな?やっと完成した。汚い字だけど心を込めて書いた手紙が。
きっと俺のこの想いが塔子さんに届くだろうって、信じて書いた手紙が。
約3年の時が過ぎた。俺大学2年生。
俺は、同じ学校の同じ年の子(以下、優菜)と付き合い始めた。
まぁ~優菜との付き合い、楽しかったことは楽しかった。お惚気じゃないが結構可愛かったし、性格もよかった。
優菜に対しては別になんの不満もなく、周りの人たちもいいカップルだねって言ってくれてた。
お世辞じゃなくみんな本心からそう言ってくれてるんだと、自分自身でも分かっていた。
でもね、お決まりの台詞じゃないけど、なんか違う。
優菜は優菜でホントいい子なんだよ。俺にはもったいないって、謙遜してるわけじゃなくそう思ってた。
でもね、いくらいい子でもこの子は塔子さんじゃないんだよねって思った。当たり前だけど。
こんな思いのまま、この付き合いを続けても相手に悪いと思ったし、なにより自分の気持ちに嘘をつくのがたまらなく嫌だった。
結局、俺の方から別れ話を切り出して別れた。その話しをした時、優菜あまりびっくりしていなかったよ。
俺の心の中には、自分とは違う誰か他の人がいる、っていうのが分かってたみたい。実際そう言われたし。
当人よりもむしろ周りの人の方がびっくりしてたっけ。
フリーになった俺だけど、塔子さんに会いに行こうなんて思わなかったよ。
だって、もう諦めろってニュアンスの手紙ももらってたから。
なにも変ったこともなく、更に1年の時が過ぎた。俺が大学3年生の時の冬の話し。
冬休みってことで、下宿先から実家へ帰るのに俺、電車を間違えて乗っちゃって、自分の降りる駅の2個手前までしかいかない電車に乗っちゃったんだ。
あぁ~なんか久しぶりだなぁ~って感じで駅の階段を降りていった。
何年経っても変り映えしない駅前の光景を見回し、特になんもすることもないし、次の電車の時間まで、本屋で立ち読みでもするかって思って、駅の階段わきの狭い歩道を歩き出した。
ホント歩道が超狭くって、車に荷物を入れようとしている、白いコートを着た女性と俺はぶつかった。
「あっ!ごめんなさい」
「すませぇ~ん」
ほぼ同時に言葉を発し、その女性のわきをすり抜けようとした時、なにか違和感を感じた。
なにかって分からなかったけど、本能が俺に何かを訴えかけてくる。そんなような気がした。
当時、そんな風に思ったかどうか定かじゃないんだけど、なにかが気になったことは確かだった。
俺はその違和感を確かめるべく、何気なく振り返った。
それまでうるさかった周りの喧騒が、一瞬で聞こえなくなった。本当にそんな気がした。
全身が小刻みに震え、寒気というかぞくぞくすると言うか、もうなんていうんだろ?
とにかく、もうなんとも言えない感覚に捉われた。
その俺の気配を感じたのか、その女性がゆっくりと顔を上げ俺の顔を見た。
はっとするその女性。左手を自分の口にあて、信じられないって表情で俺を見ている。
その女性の瞳が妙にきらきらしていた。車のライトや街頭がその女性の瞳に反射している。
そのきらめきが一瞬なくなったような気がした。そう思うと同時にその女性の目から大粒の涙がこぼれ出した。
何粒も何粒も、口に当てた手を伝わり涙が道路に落ちる。
自分を落ち着かせるためか、その女性は右手を自分の胸にあて、少しの間目をつぶっていた。
その間も、閉じた瞼から涙が何粒かこぼれ出していた。
どれぐらい時間が経ったんだろ?多分長くても1分ぐらいだろうね?
俺その間、超間抜けに口を半開きにしてたと思う。
なにか言わなきゃ、そう思ったけど言葉が出てこない。
なにかとてつもなく大きな物を飲み込んで、息苦しいような感じっていうのかな?
喉になにか詰まってる、そんな感じがした。
塔子・・・さん?やっぱ塔子さんだよな?
長かった髪にちょっとウェーブがかかり、俺の記憶の中より少し背が伸び、大人っぽくなっているような気がしたが、でもど~みても塔子さんだよな?間違いないよな?
「・・・あっ・・・ウッグン(生唾を飲む音ね)・・・」
ヤバイ、しゃべれない。言葉が出ないよ。
俺もしゃべらないが、その女性もなにもしゃべらない。瞳に涙を浮かべ、ただ俺のことを見つめている。
そっから更に1分ぐらいの時間が経過したかな?
突然、車の運転席から声がした。
「塔子?なにしてんの?」
その声の呼びかけで、やっぱり塔子さんだって思うと同時に、俺、心臓っていうか心がナイフでえぐられたような、そんなような気がした。
再会の幸せの絶頂から、一気に奈落の底へと突き落とされたね。
全身凍りついたような気がして、体全体がわなわなと震え、瞳孔が人生最大ってぐらい開いてたと思う。
おいっ!なんなんだよっ!?俺の幸せたった2分で終わりっ!?ちょっと勘弁してよ~っ!
この時、どこにこの怒りをぶつけていいのか分からなかった。
ホント、俺自分の人生呪ったね。だってその運転席から聞こえてきた声、若い男の声なんだもん。
返事をしない塔子さんに、さらにその運転席にいる男が言ってきた。
「おぉ~い?塔子~?なにしてんの~?早く乗れよ~」ってちょっとやさしめの声で。
俺、その場から走り去りたかった。その男の顔なんて見たくなかったから。
だって、そうでしょ?その男と塔子さんの幸せそうなツーショットなんて見たくないでしょ?
でも動けなかった。塔子さんが返事をしないのを不審に思ったのか、その男が車から出てきた。
うおっ!?デカっ!て思った。背が180ちょっとあって(身長165cmの塔子さんが子供に見えた)、
野球のイチローのえらをもう少し穏やかにしたような感じの、ナイスガイが車から出てきた。
俺、完敗。完封負けだよ、しかも完全試合だよってこの時わけわかんないこと考えてた。
ビジュアルも、身長(因みに俺、身長176cm)も恋も、なにも勝つものがないよって感じだった。
その男は泣いている塔子さんと、びっくりした顔で瞳孔を全開にして、自分の方を見ている
ちょっとこいつヤバイんじゃねぇ~のって感じのする男の顔を交互に見ながら言った。
「塔子?ここじゃ他の車の邪魔になるから(移動しよう)・・・」
しかし塔子さんは、その男の問いかけに何の反応も示さない。
なんの反応も示さない塔子さんの腕をゆすりながら、その男がさっきより少し大きい声で再び言った。
「塔子っ!聞こえてる?他の車の邪魔になるから移動するよ?」
そう言われやっと我に返る塔子さん。
「えっ!?・・・あっ、あぁ・・・うっうん・・・」昔と変らないハスキーな塔子さんの声だ。
「そこの彼も乗って」その男が言った。
はっ!?なんで俺も乗らんといけんのっ!?俺乗ってどうするの?しかも彼って、なんじゃそりゃ?って思った。
そう言おうと思ったが、あまりにショックが大きく声が出ないし、動くことも出来なかった。
その男が「とりあえず乗って」と言いつつ俺を車に押し込んだ。
車の後部座席で、俺はず~~~っと床の一点を見つめていた。
車は5,6分走ったかな?ガラガラガラとシャッターが開く音がして、ガレージへと入った。
俺はその男に付き添われるようにして、階段を上がりある家の玄関へと入っていった。
どっかで見た風景、どっかで一度かいだことのある匂いがした。
そうここは、4年前に来たことのある塔子さんの家だった。
前と明らかに違うのは、段ボール箱がいっぱい積んであったことぐらいかな?
俺はダイニングへと通され、椅子に座らされた。
ポジション的には俺の方は一人、塔子さんはその男と並んで座っていた。
そのポジションを見て、もうなんか情けないやら、悲しいやら、ショックやら、ほんと色んな感情が渦巻いてきた。
頭の中がぐわんぐわんする。どうする俺?泣いちゃうか?よし泣いてしまおう。
もう我慢できないしって思ったわけじゃないが、涙が自然に出てきた。
その俺の姿を見て、その男が驚いたような口調で聞いてきた。
「おい、君っ!?大丈夫かっ!?」って。
お前あほかっ!?どうみても大丈夫じゃないだろっ!?いい年した男が人んちの居間で泣いてんだぞっ!?
これのなにも見て大丈夫かって聞いてんだよっ!?お前いっぺん死んでこいよっ!!
って言いたかった。でもそんなこといえる訳がない。なんでって?だって俺、えぐえぐ泣いてんだもん。
(まぁ~泣いていなくても、屁たれな俺がそんなこと言えるわけもないんだが)
「塔子?彼ってもしかして・・・例のっ?」その男が塔子さんに尋ねた。
てんめぇ~!このヤロォ~!馴れ馴れしく塔子って呼ぶなぁ~!彼氏かもしれんが俺の前でそう呼ぶなぁ~!
それに俺のこと「彼」って聞きなれないこ言葉で言うなぁ~!って思った。ホントそう思った。
「えっ?えぇ、そうよ」塔子さんがそう答えると、その男は
「始めまして・・・」といいながら俺に手を差し出してきた。
あぁ~んっ!?てめぇ~あんだその手はっ!?その手ぶった切ったろうかっ!?とは思わなかったが、はっ!?なんだその手はっ!?シカトするしかないっしょっ!?とは思った。
でも少しは大人になれって自分に言い聞かせ、俺も手を差し出した。
「塔子の兄です。妹がいつもお世話になってるみたいで」(って感じで言ってたかな?)
といいつつ俺の手を握ってきた。
正直、後半なんて言ったか覚えてない。そんな挨拶なんて聞く必要ないって思ったから。
そんな挨拶より、俺は一つの単語に集中していた。兄っ!?はぁっ!?えっ!?
えぇ~ちょっと待ってくださいね。ちょっとお伺いしますが、今、あなたなんて仰いました?兄っていいました?
兄って単語の意味知ってるんですか?知ってる上での発言ですか?って聞きたくなった。
実はこの男も、イギリス帰り(これは当たってた)で、しばらく日本語から遠ざっていたため、日本語を忘れ(こっちは間違ってた)兄って意味が分からないのかと思った。
それかこの人、実はこう見えて外人さんなのかな?って思った。
俺は兄と言う単語の意味を、辞書片手に説明しようかと思ったぐらいだった。
いや、でも待てよ。この人どう見ても日本人だよな?。いくら長く海外にいたからといって日本語を忘れる日本人っていないよな?それにちゃんとさっきから日本語しゃべってるしって思い説明することはやめておいた。
俺は、超間抜けな顔をしながら、塔子さんの方を見た。
塔子さんは、昔、俺が一度みたことがある仕草と同じように小首を傾げながら、
「うんっ?」っていう表情をしていた。
その後、俺と塔子さんは場所を移し、塔子さんの部屋で話しをした。
日本へ帰ってきたのは一昨日らしいです。
それと実は塔子さん、この約5年の間、何度か日本に帰ってきていたらしいです。
といってもほんの数日間らしいけど。
帰国する度に俺に会いに行こうかと思ってたらしいけど、結局は会ってもどうにもならないし、悲しい思いをするだけと思い行動に移せなかったらしいです。
その躊躇する理由は、色々あったけど、最大の理由は俺から手紙の返事がこなかったことだと言ってました。
なんの返事もないと言うことは、俺には自分に対する特別な感情はなかったんだと、そう思っていたみたいです。
あと、これが一番重要な話しだったんですが、両親はまだイギリスにいて帰国する予定は未定だが、
自分とお兄さんはもうずっと日本にいるということでした。
この日、他にも色んな話しをしたけど、これも長くなるので省略です。
話しは尽きることがなかったんが、だいぶ遅くなったのでと帰ろうと思い、塔子さんの部屋を後にしようとドアに向かう途中、ふと机の上にある写真たてに入っている一枚の写真が目に入った。
机の上というか、その部屋には荷物らしい物が他にはなく(まだほとんどのダンボールが未開封だったから)、殺風景な部屋の中、その写真だけがいやでも目についた。
なんの写真だろ?って思ってちょっと近づいて見てみると、その写真には俺が写っていた。
いや、俺だけじゃなく、他の人も一緒に写ってたんだけど。
その写真は、俺が高校一年生の時の写真で、体育祭で騎馬戦をやってる時の写真だった。
そんなに大きく写ってたわけじゃないんだけど、確かに俺が写ってる。
俺が見ているのに気づいたのか、塔子さんは机に近づきその写真たてを手に取りこう言った。
「これねぇ、ヒロ君が写ってるの。偶然この写真を見つけて、写真部の人にお願いして譲ってもらったんだ」
なんか熱いものがこみ上げてきた。じ~んときたよ。
塔子さんが続けた。
「何度もしまった方がいいかなって思ったんだけど、どうしてもできなくて」
その写真を見た時に考えていたことがあった。でもなんか信じられなくて確信がもてなかった。
でもその塔子さんのその言葉で俺確信した。
塔子さんはまだ俺のことを想ってくれてるんだ。そして俺もまだ塔子さんのことが好きなんだって。
「・・・」
なにも言わない俺をみて、不安に思ったのか塔子さんが尋ねてきた。
「・・・迷惑・・・だったかな?」
「・・・いえっ・・・」心臓がバクバクいってきた。
言いたいことはあるが、やっぱ恥ずかしくて言えない。
でも今そんなこと言ってる場合じゃないだろって感じで、俺は勇気を振り絞って言った。
「いえ・・・迷惑なんかじゃないです。だって俺・・・あの日からずっと塔子さんのこと好きでしたから」
言えた。やっと言えた。約5年ずっと、ずっとずっと言いたかったことがやっと言えた。
俺、自分の言った台詞にちょっと感動したよ。まっぜんぜん大したこと言ってないんだけど。
自分の言った台詞に酔いしれ、その後の塔子さんの反応は?って感じで期待を込めて塔子さんを見た。
あれっ!?塔子さんぜんぜん素なんですけど・・・いや、なんかこうもっと反応とかないんですか?
塔子さんの俺に対する想いって、もしかして俺の勘違い?ちょっと(かなり?)不安に思うこと数秒。
塔子さん、写真たてを机の上にそっと置いて、それから俺の胸へと飛び込んできました。
俺は塔子さんの体だけじゃなく、気持ちも一緒に受け止めるようにしっかりと抱きとめた。
その感触を確かめるかのように、ゆっくりゆっくりと徐々に力をいれ抱きしめた。
「ねぇ、ヒロ君?」
「うんっ?」
「いつかみたいにぎゅっとして」
ほのかに香る髪の毛の匂い。
昔と変らない塔子さんの匂いだ。そう思いながら俺は力いっぱい塔子さんを抱きしめた。
再会は大体こんな感じです。
再会から現在に至るまでの経緯についてですが、特別なことはなにもありません。
普通に一緒に過ごし、普通にケンカしてというように、まったく普通のカップルです。
特別なことと言えば、両親に挨拶にいったことぐらいですかね。これはさすがに緊張しました。
塔子さんのお父さん、正にダンディーって感じ。
う~ん、ジェントルメンって言うのかな?そんな感じでしたね。
お母さんはと言うとですね、塔子さんお母さん似ですねって感じ。
塔子さんと同じように色が白くて、上品な感じがしました。
それとプロポーズをしたのは、今年の塔子さんの誕生日の日にです。ベタでごめん・・・。
あの時書いて、結局出せずに、塔子さんからもらった手紙と一緒にしまっておいた手紙を渡しながらプロポーズをしました。
「・・・やっと・・・」ちょっと言葉を詰まらせながらも塔子さんは続けた。
「やっと返事がもらえた・・・返事がもらえて良かった・・・」
その手紙を読み終えた塔子さんは、少し間を置いて更に続けた。
「あなたのことずっと好きでいてよかった。そしてこれからもずっと好きでいられることが出来てよかった」
半分泣き、半分笑いながら、塔子さんはそう返事をしてくれました。
あとは、特別なにもないかな?
それと俺、12月にイギリスに行ってきます。
イギリスだけでなく他のヨーロッパの国にもいくつか行きますが、イギリスがメインです。
恥ずかしいからと、俺の前ではまだ1度しか英語をしゃべってくれない、シャイなバイリンガルの方と一緒に行って来ます。
以上です。
つまらない話しに長々とお付き合いしていただき、ありがとうございました。
ついでといってはなんですが。ご両親に会った時の話しを。
俺にとっては思い出深い話しですので。
初めてご両親にお会いしたのは、塔子さんと再会してから半年後ぐらいだったかな?
両親が帰国するので、紹介の意味も込め出来れば会って欲しいってことだった。
この時「いや~それはちょっと」って思ったよ。
こんな俺の考えを非常識という人もいるかもしれないけど、正直そんなこと必要なの?って思った。
今まで、そんな風に正式に紹介なんてされたことなかったし。
まぁ~過去の付合いって言っても、そんなにないからあれなんだけど。
数少ない付き合いのうち、一つは小学生の時ね。
この時は交換日記をするぐらいのレベルの付合いだったから、さすがにこれは必要ないでしょ。
(交換日記ぐらいで、紹介されてもね。しかもまだ男女交際なんてよく知らない年頃だし)
あと、中1の頃の付き合いは、親しくなる前に振られた。
親に紹介するどころじゃなくて、お互い自分達の自己紹介もまだ全然済んないじゃんっ!?って感じ。
でもね?こんな俺でも、全くそういった経験がないわけじゃ~ない。
過去、付合ってる子の両親に会ったのは1度だけある。
中学~高校にかけて付合ってた子ね。高校スレに出てきた公子。これは両親に会った。
でもこれは紹介って言えるような、しろもんじゃなかったなぁ~。
初対面がこれほど最悪なパターンって、この先ないし、経験したくもないだろっ!?って感じだった。
言ってみれば強制出頭っていうのかな?それはこんな感じだった。
中3の時、俺は格好つけて、行ったこともない街(快速電車で60分)にデートに行った。
でもその帰り、案の定、電車を乗り間違えて、違う方向に行っちゃった(俺、昔から電車ダメなの)。
間違いに気づいた頃には、もう20分も電車に乗っていた頃だった。
前にも言ったけど、田舎のため引き返す為の電車もすぐにはなく、待つこと数十分。
やっと来た電車に乗り込んで、振り出しの駅へ到着。
さぁ~帰るかと思ってもこれまたすぐに電車がない。
なんだこれっ?すごろくの1回休み二連荘って感じ?俺、もうサイコロ振るのイヤだよって感じだった。
あまりに遅くなったので、親が心配していると思い、彼女に家へ電話をするように勧めた。
(我が家は何時になろうが、連絡なんてしないけど)
よく気がつき、思いやりのある優しい彼氏を演じようとした俺のこの作戦、大失敗。
彼女が家に電話すると、お母さんもうカンカン。帰りが遅いって。まだ7時前なのに。
俺を電話口に出せっ!ってのたまっている。恐る恐る電話に出る俺にそのお母さん
「話したいことがあるので、家まで来なさい!」って受話器が壊れるぐらいの大声で言ったよ。
約1時間後。びびりながらその子の家につくと、挨拶そっちのけで早速お母様のお説教開始。
なぜか、その嵐の様なお説教しているお母さんの隣で、お父さん爪切ってるの。しかも足の。
彼女は隣で、こんなことになって、俺に申し訳ないって感じでグスグス泣いてるし、
お父さんはパチッパチッってやってるし。そんな異様な雰囲気の中、お母さんのお説教は更に続いた。
貴方はどこの学校を受験するのだととか(お嬢さんと同じぐらいの知能なので一緒の学校を受験します)。
もうね、自分の親にも言われたことのない様なお説教を食らいましたよ。
ホントも~う満腹です、もうなにもいりません。初対面なのに、そんなにもてなさなくても結構ですよって感じ。
出されたカルピスが飲めないぐらい、小言でお腹が一杯になった。
(まぁ~そのカルピス、お母さんがしつこいぐらい勧めるので、帰り際に一気飲みしたけど)
因みにこの時、お父さん一言しかしゃべってません。
お母さんの「お父さん、なにか言うことないの?」って問いかけに
「あぁ、いや、別に(ない)」って切った爪をティッシュにくるみ、それを握り締めて言ってた。
こんなイメージのあるご両親とのご対面。避けたいと思うのは当然でしょ?
しかも相手は外国に住んでいらっしゃる、ちょっと(かなりか?)ハイソサイエティーな方たち。
「う~ん・・・」ってちょっと尻込みをするのも当然でしょ?
「あっ、あぁ、別にいいのよ?ただ、ほら、帰ってくるからどうかな?
って思ってちょっと聞いてみただけだから。ホント、気にしないで」
躊躇する俺の様子を見て、慌てたように手を振りながら塔子さんが言った。
こんな風に言われたら普通、いやとは言えないでしょ?
「いや・・・別に、いやってわけじゃないけど・・・」
「でも、本当は嫌なんでしょ?」ちょっと笑いながら塔子さんが言った。
「いや、ホント嫌じゃないよ」
「ホントにぃ~?」
ってな感じでいつの間にか、ご対面の計画が立っていました・・・。
学生だった俺だけど、スーツはたくさん持ってたよ。アルマーニとか、ドルチェガッパーナとかね。
自分で言うものなんだけど、俺、結構おしゃれだったし~フフ~ン♪
やっぱ両親と会う時は、シックにアルマーニしかないでしょって感じで超キメて行ったよ。
塔子さんの家に着き、呼び鈴を鳴らすと塔子さん本人が出てきた。
「どうぞ」って感じで(床が凹←こんなんなってるような)居間へと通された。
「ちょっと座って待っててね」そう言いながら塔子さんは一旦出て行った。
いくらお客とは言え、こういった場合上座に座るのは非常識だろと思い、下座である手前側に座った。
ガチャリ
扉が開く音がした。ご両親登場です。これは挨拶しなくてはいけないって感じで、開けていたスーツのボタンを閉めながらゆっくりと俺は立ち上がった。
「始めまして、○○と申します。ご挨拶が遅れ申し訳わけございません」
「始めまして、塔子の父です。まっ硬い挨拶は抜きにして、さっどうぞ」
「始めましてぇ、塔子の母です」
人懐っこい笑顔で俺に椅子を勧めるお父様に、温かい笑顔で俺を迎えるお母様。
はぁ~よかった。よさそうな人たちで。やっぱ塔子さんの両親だよなぁ~いい人に決まってるよ。
会うことに躊躇してた俺ってバカみたいだよ。俺の緊張も徐々に解け、終始和やかに進むご対面の儀。
っと、ここまではもちろん脳内シュミレーション。
俺がこんな風に立ち振る舞いできるわけがない。正しくはこうね。
学生だった俺が、洒落たスーツなんて持っているわけもなく(貧乏だったし)、一張羅である
成人式の時に青山で買ってもらったスーツでいざ出陣(なんか出発時に既に落ち武者状態ってかんじ)。
塔子さんの家に着き、呼び鈴を鳴らすと塔子さん本人が出てきた(これは予め計画していた)。
「ちょっと座って待っててね」そう言いながら塔子さんは一旦出て行った。
これは脳内行動と一緒。でもこっからが違う。
座って待っててねって・・・俺、どこに座ればいいの???数分間入り口付近に立ちすくむ俺。
ガチャリ
っ!!!!!!
「あらぁ~ようこそいらっしゃいました」
初めて見る塔子さんのお母様だぁ~お母様だぁ~お母様だぁ~・・・・
(丁寧語の使い方間違ってると思うから、適宜脳内変換お願いします)
「お掛けになってお待ちになっていらっしゃればよろしかったのに~」(なんか書いててわけ分からん)
「あっ・・・はっ、いえ・・・」(早速、シュミレーションの挨拶も忘れている俺)
「塔子の母です、いつも娘がお世話になっております」軽くお辞儀をしながらのご挨拶。(←こう書くんだ?今、初めて知った)
いちいち言わなくても分かります。だって塔子さんに似てますから、って一人突っ込みしつつご挨拶っと。
「あっ、はいっ、あのっ、○○といいます。よっ、よろすくお願いします」案の定、噛んだ・・・。
「どうぞ、お掛けになって」手振りで椅子を勧めるお母様。
「あっ、はい」
恐る恐る勧められたソファーに座る俺。しかし、このソファーが超曲者でさぁ~。
結構低めのソファーなのね。で、座る位置がかなり深い。くつろいで座るには申し分ないと思うが、そうするとふんぞり返って座るように格好になる。
おいおい、初対面でいきなりその座り方はないだろぉ~?って感じになるので、俺はすっごく浅く座った。
低めのソファーだから、俺の短い足でもちょっと窮屈になるのよ。
よく、TVとかで女優さんが、ソファーに座ってインタビュー受けてる姿あるでしょ?
あんな感じで、ちょっと足を横に向けなきゃいけない。本当なら大股広げて座ればいいんだろうけど、そんな座り方できないでしょ?そんなカマっぽい俺の座り姿を見て、
「もっと楽にして座ってらして」と、お母様が助け舟のような一言を。
「いえ、大丈夫です」俺は、さもこの座り方が好きなんですって感じで返事をした(俺のバカ・・・)。
「そう?ならいいんですけど」
ってお母様ぁ~、それ諦めが早過ぎっす!もう少し強引に勧めてくださいよっ!?
それと、どうござぁ~ん!はやぐぎでぇ~!お母様とのツーショットと、この体勢に、俺耐えらんなぁ~い!
俺のこの心の叫びが塔子さんに届いたのかどうか分からないが、塔子さんが登場したのは約10分後だった。
そんな俺の苦境(まぁ~自滅なんだけど)を我関せずって感じで、お母様が仰いました。
「ごめんなさいね、主人ちょっと今、用事があって。すぐ来ると思いますから」
ホントはこの時「あっ、はいっ」って返事をしつつ、
「いえ、いいです。来なくていいです。永遠に来なくていいです」って思ってた。
そんな俺の思いをよそにお母様、俺の顔を見ながらこう仰いました。
「やっと、お会いできたわねっ」って。
やっべっ!やっぱこういう家庭って付合う前に親の承諾がいるんだっ?そう思った俺は慌てて言った。
「あっ!申し訳ありません!ご挨拶が遅くなり、申し訳ありませんでしたっ!」
俺、おもいっきり頭下げた。それにしても俺、何回謝ってるんだろ・・・
「あっ、いえ、ごめんなさいね。そういったことを言ってるんじゃないのよ?
嫌味に聞こえたらごめんなさいね?ふふふ」
「あっ、いえ・・・」
ちょっと間が空いた後、お母様が何か話題はないかしらって感じで、ニッコリ微笑みながら聞いてきました。
「えっとぉ~・・・それで、娘とのお付き合いは、いつ頃からなのかしら?」
やっべーよ、これ。正直に言ったら「お前なぁ~?挨拶くんのがおっせぇ~んだよっ!あぁ~ん?」
って言うつもりだよ。こんな風に見えてこの人、荒くれ者なんだよって、中学生の時の衝撃的な経験でトラウマがある俺はそう思った。
でも、嘘言ってばれたら更に怖いしって思って正直に言った。
「あっ、はい、えっと、去年の12月からですから、約半年です・・・ね」
「あらぁ~?そぉ~なのぉ~?もっとずっと前からのお付合いだと思ってたわ」
「あっ、いえ、違います・・・」
「じゃ、あの子が(イギリスから)帰ってきた時からのお付合い?」
「あっ、はいっ。そうです」
「そうなのぉ~。もうずっと長く付合ってるもんだとばっかり思ってたわ」
なんか真綿で首を絞められてるような気がした。
遠回しに俺が挨拶に来なかったことを非難してるのかなって思った。
でもね、開き直りじゃないけど、こうなったら俺も言わせてもらいますよ。
いいですか?よく聞いてくださいね?
お母様?ずっとイギリスにいらっしゃたんですよね?それでどう挨拶をしろと?
わざわざ、イギリスまで来いって仰るんですか?挨拶のためだけに。
言っておきますけどね、俺、飛行機乗ったことないんですよ。
えっ?あぁ、新幹線はありますよ、勿論。えぇ、修学旅行で、京都に行くとき乗りましたから。
まぁ~こんなこと自慢気に話すほどのものでもないですけどね。
それと、最初に言っておきますが、我が家、貧乏なんです。スーパーって冠が乗っかってるぐらい。
パスポートの申請・受理をしに行く交通費を捻出するのも大変ないぐらい貧乏なんですっ!
しかも、俺が大学に行くと同時に、なにを思ったのか親父、家建ててんですよ。
もう50過ぎてんのに。しかも25年ローン組んでるんですよ?
あなたローン払い終わる時いったいいくつ?勝手に親子二代ローン組んでないでしょうね?
家のローンが終わったと思ったら、今度は墓地のローンが始まりますよ?互助会の。大丈夫ですか?
負の財産を残すつもりじゃないでしょうね?妹とその財産の押し付け合いっていう体裁の悪い相続争いさせないでくださいよ?って、的外れな反撃を考えてる俺にお母様仰いましたよ。
「いえね、さっき、やっとお会いできたましたねって言ったでしょ?それにはわけがあってね」
そういいながらお母様はこう話し始めました。
「私はね、えぇ~っと、ヒロ君、って呼んでもいいかしら?」
ヒロ君かぁ~ちょっと照れる。
初対面の時からそうだけど、このお母様、結構フランクなのよ。
外国生活が長かったせいかどうか分からないが、初対面の人も友達って感じなの。
なんか、知らない人はいないって感じかな。まぁ~うち母も違った意味でそうだけど・・・
「えっ?あっ、はい。えぇ(どうぞ)」ちょっとくすぐったい気持ちでそう答えた。
「ごめんなさいね、娘がそう呼んでるもので、ふふふ」
塔子さん、お母様に俺のことなんて話してるんだろ?そう思う俺をよそにお母様が続けた。
「私ね、ヒロ君のお顔見拝見するの、初めてじゃないのよ?」
「えっ!?そうなんですか?」俺には思い当たる節がまったくない。
やっぱこういう家って興信所に頼んで、身元調査するのかな?って的外れな考えをする俺。
「あの子の部屋に行ったことあるかしら?」
昔、一度だけありますけどって言いたかったけど、両親の留守中に上がったとは言えないので
「あぁ~はぁ~いやぁ~」って意味不明な返事でごまかした。
「行けば分かると思うけど、あの子、女の子の割りに飾りっ気がないのね」
そう言えば、部屋は殺風景っていうかシンプルだよな?
「表に出てるのは、机と本棚とベッドぐらい。後はなんにもないの。壁に何かを貼るってわけでもないし。
そういえば、昔はぬいぐるみがいくつかあったと思うけど、今はもう、それさえないわね。
それでね、そんな部屋でいっつも、飾ってあるものがあるのね?なんだと思う?」
俺に問いかけてくるお母様。さぁ~、んなもん知らねって思ったが、なにか返事をしなきゃと思い、
「さぁ~?」って首を捻って返事をした。
「それね、ヒロ君の写真なのよ」
「はっ!?えっ!?」
「写真たてに入ってるんだけどね。それがね、机の上にあるの。
きっと高校生の時の写真ね。娘と同じ体操服姿で写ってるから」
あの写真だっ!騎馬戦の写真だ!
「こっち(日本)の家でも、あっちの家(イギリス)でも、その写真を飾ってるのよ。
別に部屋を観察してるわけじゃないんだけど、飾りが写真しかないから目立つのよね。
それにヒロ君の写真は、いっつも一番手前に飾ってあるから。ふふふ」
って感じでお母様、更に続けた。
「たまに日本に帰ってくる時もね、あの子、必ずその写真だけは忘れずに持って帰ってきたてたわ。
それでね私も、いつもその写真を見てきたから、あぁ~やっと実物に会えたわって思って。
それでさっき、やっとお会いできましたねって言ったのよ?」
帰ってきたばっかりだから、なにもないんだって、再会した日に思ったけど、そうじゃないんだ?
「でもね?写真だけは持ち歩くけど、さすがにこれはおかしいわねって思ってたのよ?」
「?」
「あの子、日本に帰ってきた時も、別に連絡をとっている様子はないし、
それにあっちにいる時も連絡をしている様子もないでしょ?これはなにかあるなとは思ってたのね?
それに写真がずっと同じでしょ?これはもう、うちの子の片思いなんだなってずっ~と思ってたの。
でも今日こうやってお会いできたってことは、どうやら、長かった娘の片思いも
やっと終わったのねって思ったわ。それに最近、写真も増えてるみたいだし」
このお母さんの言葉を聞いて、俺、すっごい後悔した。
涙が出てくるって感触じゃなく、涙がにじんでくる、そんなような気がした。
体全体が心臓みたいに、全身がジンジンしてる。全身の感覚が研ぎ澄まされ、敏感になってたと思う。
この時声かけられてたら、俺どうなってたか分からないぐらい。
塔子さんに会いにイギリスに行くことは現実的には難しかったけど、手紙の返事ぐらい出せたはずだ。
自惚れるわけじゃないが、塔子さん、俺からの手紙の返事を待ってたはずだ。
いつくるのか、今日こなければ明日、明日じゃなければ明後日・・・
一体、塔子さんは5年間どういった気持ちで過ごしていたんだろう。
毎日、なにを思って過ごしていたんだろう。
塔子さん、今でもそうだが、あまり自分からは話しをしてこない。
話し掛けるのは専ら俺。それに対して返事をして、そっから会話を拡げていくって感じだね。
そんなタイプだから、当時の思いなんて絶対に話すわけがない。
聞かれもしないのに自ら進んで、自分の気持ちを話すようなことはしないし、それにたとえ、聞いたとしても、多分話してくれないと思う。
そんな話してをしてもなんの意味もないし、それを言うことによって、返事を出さなかった俺を責めるような感じになるのを、避けていたのかもしれない。
・
・
・
なにもしなかったことがじゃなく、何もする気がなかった自分が許せなかった。
それに自分がひどく子供に思えた。
人を想うってどういったことなんだろう?
好き=想うって考えていた、その時の俺に分かるわけがない。
いつか人を想うということが、どういったことか俺にも分かる時が来るんだろうか。
塔子さんが俺に抱いていた気持ちと、俺が塔子さんに抱いていた気持ちは違うんだと、この時はっきりと分かった。
塔子さん、ごめん。
他に言い様があるかも知れないが、この時はだたそう思った。
ごめん。塔子さん、ほんとうにごめん。
俺、この話しを聞いたとき目に涙を浮かべてただろうし、ちょっと鼻もぐずぐずしてた。
お兄様に続き、お母様の前でも泣きかよ・・・ちょっと情けないよな俺、どうしようもないバカだし・・・
でも、お母さん気遣いないふりしてくれたんだろうね?
お母さん、立ち上がりながら俺の膝をぽんと叩き
「いい?この話し、あの子には内緒よ?あの子が照れるといけないから」
指を口に当てながら、ちょっとあごを引くようにして言った。
この時、あぁ~塔子さんと同じ仕草をするんだなぁ~って思った。
「はい・・・」俺が小さく返事をすると
「お父さん遅いわね」って感じで、部屋を出て行こうとするお母様、更にこう言いました。
「ヒロ君は、娘のことどう思ってくれてるのかしら?」
「え?」
「あの子はヒロ君のことが大好きみたいね」
「・・・(こんなアホのどこがいいんだろう)」
「娘をよろしくね」って明るい口調で、素敵な笑みを携えお母様は部屋を出て行かれました。
お母さんが部屋を出て行ったのを確認すると同時に、俺慌てて目をこすった。
今になって思うと、これってお母さんの気遣いなのかなって思えるよ。
少しして塔子さんがコーヒーを持って、部屋へと入ってきた。
気のせいかもしれないけど、塔子さん見る自分の気持ちがいつもと違うと思えた。
塔子さん、普段自分の気持ちを話さないし、まして好きとか、愛してるとかなんて絶対に言わない。
そんな塔子さんの態度に不安を感じていたけど、今日のお母さんの話しでちょっと安心した。
あの日、偶然出会えて、いま一緒にいることができてるけど、
もし、あの日出会えてなかったらどうなってたのかな?って前に聞いたことがあった。
「出会う日がいつだったかの違いだけよ」
大して関心もないような返事をする塔子さんを見て、ちょっと肩透かしを食らい、寂しい気もしたけど、どうして、そんな言い方をしたのか今日分かった。
塔子さんは、再び出会えるってことではなく、決して変わらない自分の気持ちを信じていたからなんだって。
テーブルの上にカップを置く塔子さんを、俺は複雑な心境でじっと見つめた。
俺の視線に気づいたのか、塔子さん「うん?」って感じで、少し微笑みならが俺の隣へと座りました。
当たり前のように俺の横に座る塔子さん。それが俺にはうれしい。
こんな、人が聞いたら笑ってしまうような、当たり前の塔子さんのその行動が嬉しい。
自分の好きな人が隣にいる。自分のことを想ってくれている人の傍にいられる。
ただそれがうれしい。
「言葉に出さなくても、私のこの気持ちは分かっているはずよ」
ちょっと自惚れかもしれないけど、隣に座ってる塔子さんにそう言われてるような気がした。
意味もなくじ~んときた。なにか体の奥から湧き上がってくるような気がした。
そんな気持ちを落ち着かせる意味で、大きく息を吸って、ゆっくりと息を吐くように深呼吸する俺に
塔子さんが「大丈夫?そんなに緊張することないよ?」って。
こんな俺のその時の気持ちを知る由もない塔子さんは、笑いながら言ってたっけ。
でも、そんな塔子さんの言葉で、ちょっとざわざわしてた気持ちが落ち着いたことも確かだった。
そんなやり取りをして、気持ちが少し落ち着いた頃、今度はお父様ご登場です。
はぁ~一難去って又一難か・・・
さっきよりは落ち着いてたとは思うけど、やっぱ男親は緊張する。
今度は噛むこともなくしっかりと挨拶は出来た。でもその後の会話がメタメタ・・・
お父様の「こんな娘でいいのか?甘っい菓子しか作れないから将来苦労するぞぉ~」
って言葉に、俺なんて返事していいのか分からずに固まった。
えっ!?こういった時どういった返事すればいいの?
今では「いえ、たとえそうだとしても、それでも僕には過ぎたお嬢さんですよ」とか、
「僕、甘い物大好きなんですよ(ホントは少し苦手)。いい実験台になれると思います、わっはっはっ」
って感じで、英国暮らしのお父上に負けないぐらい、ウィットに富んだ返事をするんだろうけど、
「入学試験がマークシートでよかったね」って言われるような、典型的なバカ学生の俺にそんな会話など出来るわけもない。しかも緊張しまくりでキョドってるし。
おろおろする俺の様子を見たお母様がナイスフォロー。
「あなた?別に塔子をもらいにきてるわけじゃないんだから、そんな言い方しなくっても。ねぇ~?意地が悪いんだから」あぁ~ん、お母様ぁ~お優しいんだからぁ~。
でもな、いいか?おっ?こらっ!?この禿親父(って禿げてないけど)?余裕くれてんじゃねぇ~ぞ?
今日はなぁ~お初にお目にかかるご挨拶だけだが、いずれそのもらいにくる挨拶にも来っからよっ!?
それまでにそっ首洗って待ってろよ?
って俺、落ち武者なくせに、強気に希望を込めて心の中で誓った。
何年か後ホントに行ったけど。
塔子さんとの話しはこれで終わりです。
色々な方の書き込みを読ませていただきました。
こんな話しにたくさんのレスをいただけ、本当に感謝しています。
たまたま、平日に休みが取れて、なにかするかって思ってたんですが、特にすることもなかったので、この話を書き始めました。
本当は高校編も、もう書かないにしようかと思ってたんですよ。
なんか書いてて、これはつまらんなぁ~って思えてきたので・・・
でも、日曜日にバイクでこけて、ちょっと(かなりかも・・・)怪我をして自宅静養していて、ホントすることがなかったので、せっかくだから最後まで書くかって思い書きました。
皆様、本当にありがとうございました。
それと最後になりましたが、>>1さん、スレたて乙でした。
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